皇位の安定継承を目指す具体的な選択肢として、
実現可能で、かつ妥当なのは、女性・女系天皇を認め、
女性宮家を創設するという方策以外にないだろう。しかし率直に言えば、それらも難題を抱えている。
たやすく予想し得る懸念事項は、以下の3点だろう。①当事者となられる内親王方などご本人のお気持ちはどうか?
②果たして国民男性からご結婚相手が現れるか?
③男系男子に頑固に拘る少数の反対論者が残り続けるのではないか?それぞれどう考えるべきか。
《内親王方ご本人のお気持ちは?》
①について、対象が国民である場合は、憲法第3章が規定する
基本的人権を享有する主体なので、勿論、ご本人の自由意思が大前提になる。
旧宮家案の“最初の”ハードルはそこにあった。しかし、憲法第1章の適用を受ける(一方、第3章の全面的な適用は受けない)
内親王方などの場合、制度の建前として、自由意思は必ずしも
絶対的な前提とはならない。
対象となる内親王方などは、物心がついて以来、長年、女性・女系天皇、
女性宮家を巡る議論が行われて来た事実は、当事者ゆえに
熟知しておられるはずだ。だから、唐突な話ではもとより無い。
むしろ、「世襲」の「象徴」天皇という制度を維持するのであれば、
決して避けられない課題に対して、政治の怠慢と国民の無関心によって、
現在まで結論が先延ばしされて来たことの方が、申し訳なかった。この間、ご自身の将来が見通せない辛さを、ずっと抱え続けてこられたはずだ。
これ以上、宙ぶらりんの状態を強制し続けることこそ、残酷な仕打ちだろう。
だから、その意味からも、一刻も早く決着をつける必要がある。
もしご本人に辞退されるお気持ちが強い場合は、個別に皇室典範の第3条
(皇位継承の順序の変更)や第11条(皇族の身分の離脱)などの
適用が検討されるべきだろう。《ご結婚のお相手は?》
②は、政治(政府・国会)が関与できる領域ではない。
お相手は国民である以上、上記の通り、もっぱら当事者の自由意思に
委ねられるべき事柄なので、制度上の議論にはなじまない。
しかし、これまでの週刊誌やネット上などでの無軌道な
皇室バッシングの様子を見ると、皇族の男女に関わりなく、
ご結婚のハードルが絶望的なまでに高くなっているのではないか。
国民的な課題として、皇室の方々の人格や名誉が、
一方的に傷付けられ続けるこれまでのような状況は、いつまでも放置できない。畏れ多いが、秋篠宮家のご長男、悠仁親王殿下のご結婚も、
(男系維持なら、必ず男子を生まなくてはならない重圧を避け難い、
という事情に加えて)いつバッシングの標的にされるか
分からない状態が続けば、困難を極めるだろう。《頑固な反対派は?》
③について、私の肌感覚として、さすがに頑固な「男系」固執派の数は、
次第に少なくなっているように感じている。
しかし、上皇陛下のご譲位に対しても、「権威の二重化」が起こるなどと
全く見当外れの懸念を述べ立てて(これは、ご譲位後の上皇陛下の
お振る舞いへの不信感を前提としなければ、出て来ないはずの
不敬・非礼な言い分だった)、最後まで反対した少数者が存在した
(令和の今、彼らが主張したような状態は、国内のどこにも存在しない)。残念ながらそのような者は、皇位の安定継承への取り組みにおいても、
同様に残り続けるだろう。しかし、そのような少数者に配慮して、何より大切な、
皇位の将来を確保する為に欠かせない、唯一無二の方途を
断念してしまっては、本末転倒と言わざるを得ない。上皇陛下のご譲位によって、平成から令和への御代替わりが
実現した時の全国民的な祝福の前には、一握りのご譲位反対派の存在など、
まさに物の数ではなかった事実を思い起こせばよい。【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/
BLOGブログ
わが郷里・倉敷で亡母の1年祭次の記事へ